前回の続きですが、それでは、現場のニーズがベンチャービジネスにつながっていくためには何が必要か。


必要なものはいろいろあって、全部語り始めると、相当時間がかかりそうです。でも、数ある必要なものの中でも、一番重要だと思うものとして、「技術者や、医療機器であれば現場にいる医師が、アイデアを思いついた時に、それをビジネスに発展させる方法を知っているか否か」。これが実は、すごく重要なのではないかと思っています。


よく日本人の研究者から聞くのが、「あのベンチャーのあの製品のアイデアは実は私が考えたんだよね。ちょっと喋っちゃったら、すぐに特許を取られてしまって・・・。自分で先にやっておけば良かったよ。。。。」というような話。


「アイデア=ビジネス」、「アイデアがあればそれを元手に資金を集めて、ベンチャーを作る」、「自分は会社の経営等よく分からないけど、それに長けた経営者を見つければいい」、などという知識があれば、せっかくの自分のアイデアを、簡単に他人に話したりはしません。アイデアをお金にかえれるということが分かっていたら、その人は本当に大成功していたかもしれません。そういう簡単な基礎知識がないだけで、これまで日本の優秀な技術やアイデアがどれだけ海外に流出してしまっているか・・・・。


私がシリコンバレーに来て、驚いたことの一つに、技術者や医師が、会社の経営について、とてもレベルの高い知識を持っているということがあります。技術者でMBAなんていうのもごく普通。医師でMBAというのもそれほど珍しくない。MBA自体の価値については、個人的には疑問に思っていますが、少なくとも、一回勉強したことがあるか、まったく勉強したこともないかでは大きな違いがあります。社会人になってからでも、そういった知識を自ら勉強しようと思えば、勉強できる場所もたくさんあります。「この人は医者なのに、どうしてここまでファイナンスのことをちゃんと分かってるんだろう?」、「技術者なのに、どうして経営のことをここまで理解しているんだろう?」なんていう人も、たくさんいます。

まあ、そこまでのレベルに到達できなくても、少なくとも、「ベンチャーを作るという方法がある」と知っているかどうかだけでいいんです。それを教えるところから、日本の教育を変えていってもいいのではないでしょうか?


「自分の研究したことが実用化され、なおかつ、自分もお金持ちになる」というのは、研究者や技術者にとっては理想的な結果のはずなのに、そういう発想をそもそも教えようとしない日本の教育には大きな問題があります。まあ、成功モデルが少ないことも理由の一つだと思いますが、それ以上に、大学の研究室などは閉鎖的で、「金儲け=悪」というような発想のところもいまだに多いようです。


世の中、お金で苦労して悲惨な人生を歩んでいる人がこれだけ多いのに、なぜ日本では、未だに「金儲け=悪」という考え方がはびこっているのか。「世の中のためになるものを作って、それによって金持ちになる。」・・・、こんな素晴らしいことはないはずです。


結局のところ、地道に教育の内容から変えていかないことには、一長一短では、なにも変わらない。結局は、そこに帰結するように思います。もっと、長期的視点で、受験制度から、大学教育まで、抜本的な改革を期待しますが、まあ、今の政府では、有り得ないですね。とりえあえず、できるところからということで、自分の子供にはしっかり教えていきたいと思います。